寝不足でお見合いしたら、結婚が決まりました

 


「『もしや、お前は』で結婚相手だとは思わないだろ? 普通」

 そんなことを言う侑矢と綾都は廊下を歩いていた。

 営業に持っていくものがあったからだ。

 侑矢は何処に用事があるのか知らないが。

 そういえば、別になんの用もなかったみたいなのに、何故、うちの部署に来ていたのかも知らないな、と綾都は思う。

「なにか深い事情でもあるんじゃないのか?」

 らしくもなく、やさしく侑矢は訊いてきた。

「だって、突然、結婚とかおかしいだろ」

 ……深い事情、ないな。

 確かに異常な事態だが、なにか複雑な背景があってこうなっているわけではない。

 あえて、原因を追求するなら。

「うち、この間、原田さんが急に仕事辞めたじゃない。
 ご実家のご都合で」

「ああ」

 侑矢は、原田さんの退職がこの結婚に関係あるのか、という感じの神妙な顔をする。