自分の部署に戻ると、上司の種崎(たねざき)部長に言われた。 「君、聞いたよ。 慶紀くんと結婚するらしいじゃないかっ。 よくあんないいおうちと。 いや、君の家もいい家だが。 見合いかね?」 「はあ」 まあ、そこは嘘ではない。 だが、何処かでこの話を否定しなければ。 社内でも私の結婚が会社の確定になってしまうっ。 やさしい隣の席のおばさまがにこにこと訊いてくる。 「まあ、素敵。 綾都さん、ご結婚されるの? なんてお名前になるの?」 「……なんて名前なんですか?」 と綾都は種崎部長に訊いた。