鍵を渡せてよかった、と慶紀は思っていた。 綾都にこのマンションの鍵を渡したかったのだ。 ちょうどいい口実を作ってくれた赤い車の女性には感謝していた。 綾都はまだ彼女のことが気になるようで、廊下の突き当たりにある彼女の部屋のドアを見つめている。 「結局、なんだったんでしょう。 ピンポンを押したい気分です」 「お前が追っていってどうする……」 やめておけ、と慶紀は言った。