夜。
綾都が家に帰ると、駐車場に叔母の車が着いていた。
ダダダダッと駆け込む。
「花実ちゃん、私、結婚するってほんとう!?」
母と花実がいるダイニングの大きな食卓テーブルには結婚式場のパンフレットがいくつも広げてあった。
母が振り向きざま、おかえりとも言わずに言う。
「綾都。
お母さん、ここがいいわ。
海が見える白亜の神殿!」
とニコニコ顔でパンフレットを見せてきた。
「いやいやいやっ。
結婚するのお母さんじゃな……
ていうか、私もしないよっ!」
と叫んだが。
だまらっしゃい! と花実に一喝される。
「あんたにあのとき、いいのね、って言ったら、うんうんって頷いてたじゃないの」
「『うんうん』な時点で、なにがしかの適当な返事じゃない!?」
花実のことだ。
なにかの話についでに結婚話を出して、寝不足で、ぼーっとしている自分から、適当な『うんうん』を引き出したに違いない。



