第三章:王女からの求婚!? でも私は引きこもりです!

「――お願い、聖女ルクシア様。わたくしと、結婚していただけませんか?」

その瞬間、玉座の間が静まり返った。

ドカーンと爆撃音でも鳴ったのかと思うほど、重い沈黙。
騎士も、貴族も、王様も、モフたんですら凍った。

ルクシア「…………え?」

何度聞いても、聞き間違いではなかった。
膝をつき、両手を差し出しているのは――

王女・クラリス・フォン・アルデシア。
金髪蒼眼、凛とした美貌。
王族ながらも前線に立つ戦乙女であり、国家の希望。

だが今はそんな戦乙女が、あろうことか聖女にプロポーズしていた。

ルクシア「いや、なんで!? ちょっと説明して!? ていうか私今、頭からプリンまみれだけど!? すっごいバニラ臭するけど!?」

クラリス「……それが、尊いのです」

ルクシア「尊さの沼に落ちてる奴しかいないのこの国!?」

回想:運命の出会い(ルクシア知らないver)
数年前。
世界を救ったばかりのルクシアが、重傷を負ってふらふらと立っていたとき――
クラリスは偶然その姿を目撃した。

彼女の目に映ったのは、血に濡れ、誰にも頼らず、ひとりで全てを背負った“聖女”。

クラリス「――この人と、結婚したい(即断)」

それ以来、彼女はルクシアに憧れ、戦場で活躍し、女を磨き、ついにはプロポーズする決意を固めたのだ。

現在:地獄の告白タイム
ルクシア「いやいやいや、知らん知らん知らん! 見られた記憶もないし、そもそも私、あなたの名前さっき知ったからね!? なのになに? 初対面でプロポーズって、婚活アプリのテンプレでも見たの!?」

クラリス「違います!これは運命なのです!」

ルクシア「お布団との運命なら信じてるけど、人間との運命とか信じてないの!!」

クラリス「ではせめて、お付き合いから!」

ルクシア「交際0日婚はもっと怖ぇんだよ!!」

魔王軍ふたたび襲来(タイミング最悪)
そんな恋愛未満のごたごたのさなか――

「――よぉ、そろそろ本気出してもいいか?」
空に魔王のモニターが再出現。
背後には、空を埋め尽くすほどの魔物軍団。

魔王「俺さぁ、気づいたんだよ。結局、おまえ一人が強すぎるって」

ルクシア「はい、その通りでーす。引きこもり生活に戻らせてくださーい」

魔王「だから今回は、ちょっとした策を用意した」

ゴゴゴゴゴ……
その瞬間、ルクシアの周囲に何かが転送されてきた。
魔法陣の中から現れたのは――

「ルクシアぁ~! おうち帰ろ~!」
ルクシア「ママァァァァァァァァァァ!?!?!?!?」

――正真正銘、実家から呼び寄せられた、ルクシアの母である。

魔王「こっちは人質(という名の親子の情)を使ってみようと思ってなァ!!」

ルクシア「私のメンタルに攻撃してきたぁぁぁああああ!!」

モフたん「にゃー(急所すぎる)」

王国騒然、聖女パニック
ルクシア「やめて! 母の前で聖女とか言わないで! ガチで恥ずかしいから! ていうか世界の危機より“お母さんに誇れる娘”でいたいから!!」

母「ルクちゃん……引きこもりって聞いて心配してたけど、すっごい愛されてるのね……!」

ルクシア「違うの! お母さん、これは誤解なの! 周囲が変態なだけで私はただ寝てるだけなの!!」

クラリス「違いません!ルクシア様はこの世界の女神です!!」

母「お嫁にいけるか心配だったけど……よかったわねぇ……」

ルクシア「帰る!私、お布団に帰る!!!」

そして決戦の日
数日後――

魔王軍、王都直上に出現。
聖女ルクシア、ついに参戦。
ただしパジャマ姿で。

「あのパジャマこそ、正装なのだ!!」
「尊さが限界突破してる!!」
「これはもう信仰だ……!」
ルクシア「違う、ただ着替える気力がなかっただけなんだけどぉぉおおおお!!」

魔王「やっぱり、おまえ最高にぶっ壊れてんな……!」

ルクシア「そっちが言うなぁぁあああああ!!」