暇な治療院

 昼も2時を過ぎてやっと誰かが来た。
「こんにちはーーーーーー。」 隣のおばちゃんだ。
 白衣姿で玄関に出てみる。
「おやおや。 出世したねえ。 揉んでもらおうと思って来たよ。」
 おばちゃんはベッドに寝転がると昔話を始めた。
「あんたさあ、盲学校に通ってたでしょう? 近所の美代ちゃんも給食を作りに行ってたの知ってる?」
「え? そうなの? 給食員までは知らなかったよ。」
「そうか。 美代ちゃんもなあ「あの人いっぱい食べるんだよ。」って笑ってたわ。」
 「確かにね、あの頃は4人分くらいは食べてたからなあ。」
「そんなにかい? それにしては痩せてたよね?」
「痩せの大食いってやつだよ。」
「そっか。」
 おばちゃんはそれからも話し続けます。
父さんの会社のこと、母さんの学生時代のこと、、、。
 ついでのついでに妹のことまで、、、。
妹の話には乗れないなあ。 だって、、、。
 あいつのおかげでとんでもない目に遭ったんだからね。
それでこの町を離れて暮らしてたわけよ。
 20年くらい経って妹が男と一緒に居なくなったって聞いたから戻ってきたんだ。
 じゃなかったらこんな危ない町で開業なんかしないよ。
 あれあれ? 変だぞ。
静かになったなと思ったらおばちゃんは夢の中。
 (まったくもう、いっつもこうなんだからなあ。)
おばちゃんはいつも揉まれながら寝てるんです。 「物足りないなあ。」って言うんだけど、、、。
 今日もしょうがないから30分おまけしましょうか。
誰も来てないし待ってる人も居ないからいいよね。
 そんなわけでおばちゃんが帰ったのは4時過ぎでありました。 何だったんだろう?
 もう予約も来ないし誰も来ないと思うから留守電にして白衣も脱ぎましょうか。
早くたーーーーーーーーっくさん来るようになればいいなあ。
そうなったら「暇なほうがいいなあ。」って思うんだろうけど。

 白衣も脱いでジーパンに着替えます。 ラフでいいわねえ。
夜は何を食べようか?
 久しぶりに寿司でも買ってこようかな。
買い物に行くのは生協さん。 長く付き合ってるから、、、。
他の店にも行きたいなとは思うけど、慣れちゃってるからさあ。
 店長とバカバカしい突っ込み合いをしながら買いたい物を探すんですよ。
寿司や刺身なんかはいい物を選んでもらうんだけどねえ。 ねえ、高島君。
同い年なのよ 彼とは。 だから気が合うのかねえ?
お互いに言いたい放題だもんね いっつも。
 ってなわけで今日も寿司を買ってきましたよ。 飲むぞーーーー!