「衣都の死の間際に…あなたを会わせてあげられなかった」 あなたたちはとてもお互いのことを大切に思っていたのに…ごめんなさい。 あの日、怒りに満ちていた俺が、目の前の彼女に怒った、望んだ言葉がある。 なのに怒りは湧いてこず、そこにあるのは静かな水平だけだった。 「―――大丈夫です。夕方でしたし、ご家族がいて、衣都も安心したと思います」 衣都の母は眉を下げて、「そう…」とだけ微笑んだ。