かつての青木家とは少し離れた小さな家に、衣都の両親は住んでいた。 「どうぞ」 「ありがとうございます」 ガラスのコップに麦茶と、小さなクッキーが出される。 麦茶を飲むと、懐かしい味が鼻の奥を突いた。 ただ静かにお茶を飲み、クッキーをかじる時間がすぎる。 俺がふとリビングに目をずらすと、仏壇が目に入った。 遺影は見覚えがある。ネモフィラの畑に一緒に遊びに行ったときの写真だ。 あの夏よりほんの少し前の春だった。