コンコン、とドアを叩く。 無機質な白いドアに、金属製の取っ手がついただけのドア。 衣都の部屋の、木製の温かみのあるドアとは違うな、と思った。 衣都の手書きのドアプレートもない。 本当にここに衣都がいるのか、わからなくなっていた。 「…お母さん?」 俺はドアの前で手を止める。 だよな。そうだよな。わかってた。 小さな声だった。でもはっきり聞こえた。