それは夏のことだった。 そうだ、蝉が五月蝿かったんだ。 いつも聞いている、ミーンミーンという風物詩のような鳴き声じゃなくて。 不思議な、珍しい蝉の鳴き声だった。 色が眩かった。 夏の、透き通るような鮮やかな青空。 青々と茂った、緑色の葉桜。 そして純白の、眩しいくらいに真っ白な入道雲。 校舎の向こう側に入道雲が見えて、手前に大樹の葉っぱが見えて。それ全体と、俺を覆ってしまうくらいに、青が広がっていた。