視界が歪む。 という表現もなんだか妙だ。 なにせここは真っ暗闇なのだ。 目の前も自分の姿さえも視認できないのに、なぜかぐわんぐわんと視界が揺れ動き、歪んでいる感覚がする。 一体何なんだ…? 未知の経験にも関わらず、俺は大してパニックになっていなかった。 多分、死んでも別に衣都に会えるだけ、と考えていたからだ。 ―――もしかしたら、それは本当にそう(・・)だったのかもしれない。