ちょっと拗ねたように言うと、彼は笑って、そっとわたしの手を握った。 通りには人が多かったから、そっと手をつなぐ手だけを、上着のポケットの中へ。 心が、春の空気みたいにぽかぽかする。 「この春、もっと佐倉さんと一緒にいたいな」 「うん、わたしも」 もうすぐ始まる新しい一年。 一ノ瀬くんといられるこの時間が、これからも変わらず続いていきますように── そう願いながら、わたしは彼と肩を並べて歩き出した。