「…え?」
間抜けな声が漏れた。
意味がわからない。
「ど…どう言うこと?」
「言葉の通り、生まれ変わったんだよ」
理解力がない私にちょっと苛立ったようだ。言葉に棘がある気がする。
…だって、そんなの信じられない。
そんなファンタジーなことを言われても、信じられるわけない。
…あ。
「前世にも…私は、この歳の今日、ここに来た?」
そんな記憶がさっき頭の中に駆け巡ったのだ。
それは、思い出す前には全くなかった記憶。
「私は…女の子を庇って車に轢かれて死んだ…?」
葵はゆっくりと首を縦に振った。
「そうだよ」
「貴方は、葵、くん…? さん…? なの?」
「二度とくんとさんをつけるな」
さっきまで丁寧な感じはちょっと感じられたのに、ムカついたのか私が思い出したからなのか本性を明かし出した。
「俺のことはどこまで覚えてる?」
「えっと、名前しか。年齢とかは…私と同じくらい、かな?」
どう? 何歳? と聞いてみると、葵は肩をすくめた。
「さあ。年齢なんて数えてない」
「え…?」
「俺は不老不死の一族で、生まれて来てからずっと生きてる」
えっ。
フロウフシ。
聞いたことはあっても、頭が回らない。
「し、死なない人、ってこと…?」
さっき年齢は数えないとか何とか言ってた意味がわかった。
死なないから、1000歳とかもありうるのに、そんな数を数えるのが大変だったんだ。
「まあでも、死ぬ方法ならあるけど」
「し、死ぬ方法…?」
「この花の棘を腕とかに刺すんだよ」
そう言って綺麗な花の写真を見せてきた。
…ん?これって、もしかして…。
「まあでもこの花はものすごく珍しいから、そんな簡単に死ねな…」
「わ、私…この花、家で育ててる」
「…は?」
これには流石に葵も驚愕している。
「な、なんか…誰だったか忘れたけど、誰かに植物の種をもらったから育てたらこの花が…」
「マジかよ」
まさか、そんな危ない花だったなんて…!
「ふ、普通の人でも棘刺したら死んじゃうのかな…?」
「それはない。ただ痛いだけだと思う」
「そ、そっか…」
薔薇みたいな感じか…。
確かにあの花は家以外では全く見なかった。希少だったなんて…。
「じゃあお前の家に行けば死ねるな。おい、連れてけ」
……。
「ええええ⁉︎」
し、死ねるな、って…⁉︎
「し、死んじゃうの⁉︎」
「そうだな。もう不老不死の者は人じゃないって言われんの、うんざりなんだよ」
え…。
「まあ確かに、そうだけど…」
「そんなことないよ」
私は葵に向かって今までで一番真剣な瞳できっぱり言い切った。



