っ、何?
なんか、人の気配。
どこかから落ちてきた? 人が? ここ、屋上なのに? 空から、降ってきた?
…有り得ない。
くるりと振り向いた。
すると、私の視界に美少年が映る。
切れ長の綺麗な透き通った黒色の瞳。
無造作に跳ねている綺麗な黒髪。
一個一個のパーツがすごく整っている、チビな私より背がうんと高いイケメンの人が、そこにいた。
……っ。
今日一番の既視感と違和感を覚えた。
この人、みた事があるっ……‼︎
最近よく見る夢と、今世では経験したはずのない記憶の中にいる男の子と、重なった。
その途端、私の中にあるはずのない記憶が駆け巡る。
そうだ、“前”の今日……、中2の私はここに走ったのだ。
自殺するために。
だけど、そうしてこの屋上についた時…、この子がいたのだ。
そして…。
私はこの子とずっと毎日を過ごしていたのだ。学校も行かずに、家にも帰らず、ずっと。
これが悪い事なのはわかっていた。でも、この子といるのはすごく楽しかった。
多分ところどころ抜けている記憶はあるのだろう。この子のことは全く思い出せない。
でも…。
頑張って思い出していくと、車と、歩きスマホをしている幼い女の子が思い出せた。
私は先を思い出してさっと青ざめる。
そうだ、この時私は、昔…。
——ドンっ
女の子を押す。
私は車の前にいる。
私の視界いっぱいに、車と、異様に明るい車のライトが映って——。
意識は途絶えたんだ。
そうだ、私はあの時。
死んだんだった——。
前の男の子が口を開く。
「帆香は、生まれ変わったんだよ」
彼に相応しい、綺麗な声でそう言った。



