会いに行くから、待っていて。


テーマ決め。

テーマもみんなで決めるそうで、黒板の方をじっと見据える。


「はい、パソコン出してー」

先生の指示に従って各々パソコンを出す。

私たちの学校では、授業など学習をする時にパソコンを使う。


パソコンを使うと急に大人びた気がして、少し口元がにやけてしまう。

……いけない。一年生から使っているんだから、そろそろ慣れなくちゃ。


でも小学校の頃はiPadだったから、パソコンに少し浮かれてしまうのも、しょうがないよね……?

「パソコンでテーマを打って、提出してね」

学習用のアプリを使ってどんどん提出していく。

この先生に提出したものは、その提出のものによって他の人のものが見えるかが変わる。先生がパスワードを入れたら他の人のものが見えるらしい。今日は……というか今回は……、パスワードを入れたみたいだ。他の人の回答が見える。


私は適当に、「いくなら遊園地か水族館か?」にしてみたけど結構色々種類あるなぁ……

「じゃあこん中から適当に選ぶよー」

先生が黒板に案を書いていく。

……私のだけ、書かれなかった。

……いいか。私は、そんなものより「〇〇先生(クラスの担任で学年で人気)か△△先生(他学年だが可愛いと人気)、どちらが可愛いか」が気になる……。

みんなも「わー!これよくね⁉︎」って言ってるし、これに決定かな。

「多数決とるよー」

……1人一回手を挙げる。

じゃあ私は、人気がなさそうなのにしよう。

お目当てのものにすっと手を挙げると、周りからこそこそ聞こえてきた。

「うわー佐海が手挙げてる」

「私、佐海と同じやつにしたくないなー」

「うわ、佐海が手あげてんの俺のなんだけどー。キモっ」

やっぱり、こうなった。

手を挙げたのは真城くんの案ではない。真城くんの友達でもない。もしそうだったら先生に目をつけられるから。もうつけられてるけど。

「じゃあ、〇〇先生か△△先生、どちらが可愛いかになりましたー」


ほら、やっぱり。私が選ばない方が、みんなの思い通りになる。


私は、いない方がいいんだから。

だから、みんなの考えに合わせる。そうなるように動く。

私がやれるのは、そのくらい。

話し合いは次回になった。

“私”って、なんだっけ?

お弁当は毎日、私が作っている。


今日はナポリタンとサラダとか、お肉などを詰め込んでみた。

母はお弁当などを私の分を作ろうとしない。


『本当に、帆香なんか産まなきゃ良かった』

ところどころの床にごみが散らばっている家の中で、私に背を向けてそう呟いた昔の母親。


『お父さんも出ていっちゃうし。あんたのせいよ‼︎』

——バンッ

まだはっきりと思い出せる。

頬にバンっと走った鋭い痛み。

ジンジンと痛む頬を押さえながら呆然としながら母親のことを見た。


真っ黒な、光のない瞳で私のことを睨みつけてきた。

『お母さん……?』

『黙りなさい‼︎あんたの母になった覚えはないわ‼︎』


そして、追い打ちをかけるように。





『死ねばいいのに‼︎ほんっとうにうざい‼︎消えなさい‼︎』




バンっと、床に叩きつけられた。