「あ、ごめん、私電車乗れないんだよね」
「「え??」」
「お金ないの」
苦笑いをしながら爆弾発言。そう言えば…。
買い物のお金は申し訳なさそうにしながらもあおくんがポケットから出したお金で済ませてるみたいだけど…、確かに自分のお金を持ってるところは見てない。
そりゃそうか、しばらくずっと親からお小遣いもらってないもんね。
「親に開いに行ってお小遣いもらったら?」
「無理だと思う…もう私、家出したも同然だから」
そっか。僕も家出したらどうなるかとかは全く知らないけど、家出したのに帰ってきたらきっと外に出さなくなる。もうここに戻って来れないだろう。
あおくんも同じことを考えたのか「そうか」と言ってそれ以上何も言わなかった。帰って欲しくないんだろうな。あおくん気持ち悪ぅ。愛が暴走してるよぉ。頭お花畑になっちゃってない?
「帆香ちゃんは家に帰りたい?」
いつものトーンで、探りを入れてみた。
いつも、家族や家の話は言いにくそうだし、隠してるみたいだから。
案の定帆香ちゃんは笑顔を浮かべて真実を濁しただけだった。
「…どう、かな」
帰りたく、ないのかな?
「そっか」
まあ、帰りたいと言っても帰りたくないと言っても僕たちか両親を裏切る事になるもんね。
「両親は心配してくれそう?」
また探りを入れた。
「…」
帆香ちゃんはちょっと寂しそうに笑った。
「…私の家は、離婚しててお父さんがいないの」
「あ、そうなんだ」
だから寂しそうなのか。
…帆香ちゃんはお父さんに会いたいのかな。
「離婚したのはいつ?」
「お前デリカシーなくね?」
あおくんが睨んでくる。
「あおくんよりはあるよ?」
「大丈夫だよ。…3歳、だよ」
「3歳の時に?」
でも離婚してるのを覚えてるのか。記憶力がいいのか、大きくなってからお母さんが教えてくれたのか、どっちだろ。
それよりも気になるのは。
「………うん」
家族の話をしてる、帆香ちゃんの悲しそうな、寂しそうな、それでいて泣きそうな、そんな表情だった。
そんな表情を見たら、僕ももう探りを入れるなんてことはできなかった。
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