会いに行くから、待っていて。





自由。


自由に生きていた時は、私にはあったけれど、もう思い出せない程昔の話だ。


昔のことを思い出して感傷に浸るような真似はしたくない。だってもう過ぎたことなんだし…。過ぎたことを言いまくっていても何も変わらない。



そんなふうに考えていたら、いつの間にか目の前に大きなくりくりの瞳がっ!



「わああああっ⁉︎」



口から心臓が飛び出るんじゃないかって程びっくりした私は思わずばっと後ろへ。


力が抜けてへたりとしゃがみ込む。


まだ心臓、ドキドキ言ってるっ…。



「し、しししし汐くん⁉︎ 何かな⁉︎」

「帆香ちゃん、めっちゃ反応いいねぇ。驚かせ甲斐があるよ〜」

きゃははと可愛く笑われた。


大きな瞳に、血色がよく赤めの頬。

女子として、負けた…。汐くんに勝とうとも思わないけど。


「驚かせ甲斐…」


「ん?どしたの?」


復唱した私にきょとんとして聞いてくれた。



…喜んでくれたなら、よかった…。


『いい、あんたは私のために働けばいいのよ』



『いーい?お前みたいなごみは、誰かのためになることをやっとけばいいんだよ。自分のために?何言ってんの、あんたは生まれた意味なんてないんだから、そんなことしなくていいって』


お母さん…じゃない、といつかのクラスメイトの声が耳元で聞こえた気がする。


『お母、さん…、やめて…』


『あんたなんかの親じゃないわ‼︎』


やだ、やめて。



もう思い出したくない。


いや、私は楽しく、楽しんだりしちゃいけない。

『永遠に絶望してなさい』

…ずっと、絶望しなきゃいけないんだ。


そんなふうに決められてしまっているんだ。


「…帆香ちゃん?」


「え、あ、ごめ…ぼーっとしてた…」


いつの間にか汐くんと葵の注目を浴びていたようだ。

「もー、帆香ちゃんはおっちょこちょいだなぁ。話してたのに妄想しちゃって〜」


「わわ」

汐くんに頭を撫でられる。


私がふさふさの頭を撫でたいと思っているのに、私が撫でられてる…。


「…俺の家で勝手にしやがって…」



「ん?違うよぉ。僕は帆香ちゃんを観察するためにちょっとだけ住ませてもらうだけ〜!」



観察?



わ…私を⁉︎



「ね、観察してもいい?」



えーっと。


なぜこんなイケメンの観察対象に…⁉︎



しかも私が…⁉︎



こんな地味で、いっつも「絶望」してて…なのに観察…される⁉︎ え⁉︎どゆこと⁉︎