「僕のことも忘れないでねっ」
そう可愛くいった汐くんだったけど…。
「えっと…」
葵とどういう関係なのかも、何者なのかもよくわからない。
珍紛漢紛だ。
するとそれが顔に出ていたのか、汐くんが言ってくれた。
「ああ、そうそうっ。僕、あおくんと同じで不老不死なの。今いま、あおくんと不老不死の一族で話してたんだけど、僕、あまりにもあおくんが誰かに依存するなんて考えられなかったから、どんな子か見にきた、ってわけ♪」
あ、そ、そうなんだ。
葵と同じで、不老不死なんだ。
でも、葵より身長が低く、私と同じくらいなことに気付いた。
「ああ、身長? 身長はねっ、人によって止まる時が違うんだよね〜。僕があおくんと同じ時期に止まってたら身長伸びてたのに、もー、ものすごくあおくん自慢してくるんだよねぇ。もーー、やんなっちゃうよぉぉ」
「お前、べらべら余計なこと喋ってんじゃない」
「痛っ。暴力はんたーい」
「暴力反対? 暴力しようと思ってなくても無意識のうちに暴力してる馬鹿力には言われたくないんだが?」
ば、馬鹿力っ…?
「君はなんていう名前なの?」
ずいっと顔を寄せてきた。
近くで見ると余計顔の綺麗さがすごく際立って、思わず見入ってしまう。
「僕の顔綺麗? も〜、お世辞が上手だなぁ」
あ、あれ? さっきから私が考えてることが伝わってるような? そんなわかりやすい顔してるかな、私。
「あ、えっと、私は佐海帆香、です。」
「僕、敬語使えないし、難しい敬語使われてもよくわかんないから、敬語使わなくていいよ! よろしく帆香ちゃん!」
ものすごく明るくて可愛い汐くんと葵は正反対の性格なんだなぁ。
「うん、よろしく帆香ちゃん!」
「よ、よろしく…」
…。
…………。
ああああああっ。
「?」
そのふさふさの髪…撫でたくなるっ。
きょとんとしてる汐くんが私なんかとは比べ物になれないくらい可愛いしっ。
これは…女子として負け確定なのでは⁉︎
「そんなことないよぉ〜。も〜っ」
…?
さっきから変わらない笑顔。でも…。
「…え?」
私、そんな考えてること顔に出る…?
汐くんの勘が良いだけ?
「…………………お前……」
「あれれ? あおくんが激おこだぁ。きゃー、こっわぁ。助けてー帆香ちゃああああん」
「……………」
…葵から、ものすごい圧を感じる…。
私はこの雰囲気に冷や汗を浮かべることしかできない。
「なんでここにいんだ? ここは俺の住んでるところだ。つまり、部外者が軽々と入れる場じゃない」
「さっき言ったじゃ〜ん。僕はあおくんが依存してる女子を見に行——」
「殺す」
「きゃー」
あ、あれ? 葵は本気でキレてるっぽいけど、汐くんは結構楽しんでる…⁉︎
「まぁまぁ。僕はただ、帆香ちゃんを見に来ただけっ」
…え?私を見にきた?…まさか…。
私…、動物園の動物と同じような人になっちゃったの⁉︎
謎思考になりながらも2人の会話に聞き耳を立てる。
「ってことで、僕ここに住も〜っと」
「え?」
「は?」
「よろしくっ」
「おい——」
「ぐー、ぐー」
ソファに寝っ転がった瞬間寝息を立て始めた汐くん。え、ええっ…寝るの早い…そんなに眠かったの、かな…?
「好き勝手して…」
ものすごい目つきで汐くんを睨んでいる葵。
「ああ…こいつ自由だろ?」
「そ、そうだね。自由なワンちゃんみたい…」
自由、か…。
なんでも好きにできるってこと、だよね。



