「お姉さんにはさ、私、見えるんだよね?」
「う、うん」
「さっきさー、触れたよね?」
さっきというのは、きっと2人して倒れた時のこと。あの時、女の子の冷たい体温が感じられた。
「う、うん」
触れるのなんて…、普通じゃない?普通だよね…。
「じゃあさー…」
女の子が瞳の色を変えた。
「私、お姉さんに取り憑いてあげるよ」
ブルっと震えた。震えが頭から爪先まで駆け巡る。
「…え…?」
「帆香、近づかない方がいい。こいつは幽霊だ」
「えっ…」
よくホラー話に出てくる、この世界で一番怖いものじゃん…っ!
そうか。このこ、もう死んでいるのか。だから、こんなに顔色が悪いんだ。
取り憑いてあげる、ってことは…。
とりつかれたら、不幸がその人物に降りかかるって聞いた。
事故に遭ったり…とにかく色々。
でも…それは本当なんだろうか。
取り憑かれたら、私の意思なんて消えて、実質幽霊が動いてることになるんじゃない?よくファンタジー小説であるみたいに。
私の体を、幽霊が動かすーみたいな。
…よくわかんないけど、取り憑かれたらやばいことはわかる!!
あっ、葵は⁉︎
「葵は大丈夫なの⁉︎」
「俺は別に、幽霊くらい消せるから。なんてったって“人じゃない”んだからな」
ああっ、拗ねてる!葵がすねてるっ。
人じゃないって言われたこと、結構根に持ってるみたい…。
「とりあえず逃げようっ」
葵の腕を引いて道を抜けてさっきの廃墟に逃げる。
「…はぁ、はぁ…」
体力が無さすぎる私は肩で息をしながら、あんな遠い距離を走ったのに呼吸が乱れていない葵に聞いた。
「そういえば、なんであの道に連れてきたの?」
「…あいつは幽霊だって言ったよな?」
「?うん…」
あれ?
今ちょっと違和感を覚えた。
幽霊ってことは亡くなっている。
亡くなっている人って…見える、っけ?
ホラー苦手な私は、さああっと青ざめた。
「まさか…」
「帆香。お前は霊感があるな」
やっぱり…。
ショックを受けて真っ青になっている私をじろじろ見てくる葵。
「前世はなかったのに、驚きだな。転生して霊感がついたって感じか?」
ええええっ、転生したから⁉︎
そのせいなの⁉︎



