「……………………ん?」
違和感に気付いたのか、葵が目を見開いた。
「いや、そんなはずは…」
そう言いながらも私をジロジロ観察してくる。
「あのー…」
居心地が、悪すぎる…。
まだわかんないのかな、違和感の意味…。
「ちょっと来い」
「え?」
手を引っ張られて階段をかけ降りる。
「何っ?」
そう言いながらもついていくと…狭い道へと出た。
人通りが少ない。
「え、何?何…?」
完全にパニックになってしまう。
こ、ここどこ…?何でここまで連れてきたの…?
聞きたいことはいっぱいあったけど、すぐにそんなものも消えていく。
向こうから、真っ青な顔色の生気が感じられない女の子がゆったりと歩いてきたのだ。
だ、大丈夫…なのかな?あんな真っ青な顔で…。
近づこうとするも、葵が私の前に立っているため近づけない。
「ど、どうしたの?迷子?」
一応声をかけてみるとギョッとしたように葵が私を振り返る。
女の子は不気味に私を見てにたりと笑った。
その笑顔にゾッとする。
「お姉さん……私が見えるの?」
「…え?」
背筋が凍った。話し方も、ゆったりとした不気味なもので、薄暗い道と相まってすごく、怖い。
大の苦手なホラー映画の中にいるような気分になってきた。
「う、うん…?み、見える、けど…」
「そっか…」
さっきよりも嬉しそうに笑う女の子の瞳は、笑っていない。その子の瞳の奥をじっと見ていると、暗い瞳の中に、吸い込まれて、いき、そうな…。
——ぐっ
葵に手首を強く掴まれて、意識が覚醒する。
意識を失って地面に膝をつきそうだったみたいだ。
女の子は、残念そうにため息を吐いた。
「あんた、邪魔だよ」
冷たくそう言って、葵を睨む。
その冷たい瞳は、いまにも葵を殺しちゃいそうなほど怖かった。
「邪魔者には消えてもらわないとね」
不気味に笑った女の子に、ゾッとする。まさか、ほんとに葵を殺そうと…?
彼女が何者なのかわからないけど、彼女ならほんとに人を殺せそうに見えた。
彼女はゆらり、足を踏み出す。洋服の隙間から見えた足も、心配するくらい白くて細かった。
ゆっくり歩いていた彼女が、急に走り出す。目がとらえているのは、葵だ。
「…っ!」
葵の前でバッと女の子がジャンプした瞬間、私は葵を守るように葵の前に立った。
「!」
女の子も葵もびっくりしたのがわかる。
多分女の子は攻撃しようとしていた右腕を驚いたのか動かさなくなって、そのまま重力のままに落ちてきた。
私の、上に。
「わっ」
「わああっ」
2人して叫んだけれどもちろん2人して倒れる。
「大丈夫か!」
葵が血相を変えてすぐに私を起こしてくれる。
「え、う、うん。全然大丈夫」
「全く大丈夫じゃないだろ!…はあ、危ないことするなー…」
危ない?どこが?
どうしてそんなに慌てているの?
女の子はゆっくりと立って、チッと舌打ちをした。
「あーあ、2人とも逃しちゃった…。ねえ、お姉さん」
多分お姉さんとは私のことだ。



