「絶対そんなことない。葵は私たちと全く変わらないよ。人だよ。もし葵が人間じゃないと心から思っていても、人だろうと人じゃなくても、葵は葵だよ。それ以外の何者でもない」
「…」
葵が急に呆れたような顔になった。
「…帆香、よくそんな長い言葉を一息で言えたな」
「肺活量には自信あるんだ」
そう言って笑ってみせる。
「死なないでね、葵」
「…」
ちょっと葵は悩んでから、軽くお願いをしてきた。
「帆香が側にいてくれるなら」
「へっ⁉︎」
「そういえば、お前の前の人生でも思ったんだけど、何でお前は夏でも長袖長ズボンとか、肌を見せない服装なんだ?」
は、話逸らしたっ…!
クラスメイトに『あんたは一生長袖長ズボンとかで、肌を隠してなさい。いい?』って言われたからなんだけど…今でもその理由は全くわかっていない。
「えっと…お願いされたの。し、知り合いに」
お母さんに家事を全て任されていること、クラスメイトから無視されていることなどを、知られたくなかった。
多分、それは前世でも一緒。
「そういえば、私は前世はどんな生活をしていたの?どういう性格だったの…?」
「うーん」
葵は少し考えるような素振りをして、口を開いた。
「普通、性格には生活が出るだろ? 生活は見たことないから知らないけど…、性格は今と同じような感じだった。服装も」
私は驚いてきゅっと左腕のあれを握った。
私が長袖を着ているのは、まだ痕が残っているあの傷を隠すためでもある。
私は最近、一ヶ月に一回は母親に軽く傷をつけられる。
私はすぐ怪我が治るタイプだから結構すぐに治る。それは結構良かったなと思う。
「じゃあ…私は前世と同じ生活をしていたってこと?」
「そうだと思う。前世の名前も佐海帆香だったから」
え…。
3歳の頃に刺されたのも、2回目だったなんて。
「だ、だとしたら、クラスメイトとかも、同じ人に生まれ変わってるのかな?私と同じように…」
例えば真城くん。前世の真城くんが亡くなって、今の真城くんになってたり…。
「それはわからない。でも、そうだったとしても帆香みたいに前世の記憶はないだろ。もしあったら、前世と全く同じ人生をなぞって生きてるだけだ」
そうして、葵は腕を組んでこっちを睨んできた。
「そもそも、前世の記憶を持っている人なんてほとんどいないんだ。俺が会ってきた中で、確率はおよそ…」
「か、確率の話はいいから!」
私が理解できる域を超えそうな気がするっ…。
「…」
「⁉︎何⁉︎」
急に身を乗り出してきた葵から逃げるように後ずさる。
「なんかおかしいんだよな。前世の帆香より存在感があるというか」
存在感が…?そ、それは喜んでいいのか貶されてるのか…どっち⁉︎



