魔法使い時々王子

書庫の扉が開き、リアンが姿を見せた。

「シド…あら、あなたは…?」

「リアン、お疲れ。どうしたんだ?」

「アリス様の本を返しにきたのよ。」

棚の前にいたシドが振り返る。その隣には見慣れない女の子がいて、リアンは首を傾げた。

「こんにちはー! もしかしてリアンさん? 話に聞いてたとおり、すっごく綺麗な人だね!」

突然の言葉にリアンは戸惑いながらも微笑みを返す。

「え、ええ…あの、あなたは?」

「セラって言います。王宮で魔法薬師として働くことになって。よろしくね!」

セラはリアンの手を取ると上下にぶんぶん振った。

元気がよく人懐っこいセラにリアンは少し圧倒された。

すると、セラが唐突に思い出したように言った。

「ねえ、シドってアスタリト出身なんだってね? 実は私もなの! でもさ、びっくりしちゃったんだよね。まさかシドが元――」

「セラ」

シドがすかさず遮るように名前を呼んだ。声は穏やかだったが、どこかぴしゃりとした鋭さがあった。

セラはハッとして口を閉じ、「ん…?あ、えっと、、」と首をかしげた。

リアンはそんな2人のやり取りを見ながら、言葉には出さなかったが胸の内でざわめきを感じていた。


「…それじゃ私まだ仕事が残ってるから行くわね。またね、セラさん。」

リアンはにこりと微笑んでその場を後にした。

書庫を出るとリアンは少し歩いたところで止まり、書庫の方を振り返った。
──何か、自分の知らない秘密がある。
そんな空気を残して、リアンは静かにその場を後にした。

* * *

「ねえ、さっきのって……」

扉が閉まったあと、セラがそっと声を潜めて言った。

「リアンさんってシドの友達なんでしょ? なのに、この王宮でまだ知られてなかったんだね。ちょっとびっくり」

「王宮で知ってる人はいない。だから、頼むな。くれぐれも余計なこと言うなよ」

「うん、気をつける。ていうか私、今ギリセーフだったよね?」

セラが苦笑まじりに言うと、シドもため息混じりに笑った。