魔法使い時々王子

ロザリアに頼まれ、書庫に本を戻しに行くことになったセラ。
シドに案内されながら向かったその場所は、静まり返った王宮の奥、重厚な扉の向こうだった。

「うわぁ……すっご……!」

天井まで届く書棚に圧倒された様子で、セラは目を輝かせて辺りを見回す。
「さすが王宮って感じだね。これ、全部読むのに一生かかりそう!」

「まあ、俺もまだ全部は把握してないよ」とシドが苦笑する。

2人は肩を並べて本を戻していく。その合間、シドがふと尋ねた。

「アスタリトって……今、どうなってる? 変わりないか?」

「うーん。変わらないよ。ちょっと前にジル王子の誕生日で大きなパレードがあったくらいかな。町中盛り上がってたよー」

「……そうか」

「そういえばさ、最近はジル王子が誰と結婚するかって話題ばっかり。新聞でも毎日誰かが候補に挙がってるの。みんな騒いでるよ」

セラは笑いながら話すが、シドはほんの少し視線を逸らした。

「年齢的にも、そろそろそういう時期なんだろうな……」

淡々と言葉を返すも、胸の奥がざわつく。
かつて、自分も「その中」にいた。今はもう、違う。

「けど、なんか不思議だよね」
「何が?」

「うーん……あのジル王子の弟が、今ここで私の先輩やってるってこと」

「……ま、そうだな」

シドは小さく笑い、本を棚に戻した。

「不思議だけど、なんか良いと思うな。私は好きだよ、ここの雰囲気も、人も」

「そりゃよかった」

2人の間に、少しだけ柔らかな沈黙が流れた。
静かな書庫の中、そのやり取りはほんのりと温度を持って響いていた。