魔法使い時々王子

「本当に王子様?アスタリトの?」
セラが目を丸くしてシドを見つめる。

「……ああ。アスタリト王国の王子だった。まあ、今は違うけどな」
シドは観念したように言葉を続けた。

セラはしばらくシドの顔をじっと見たあと、「あー、言われてみれば、どこかで見た顔だとは思ってたんだよね」と、あくまで呑気に言った。

「……なんで今さら言うんだよ」
シドは頭を押さえながら小さくため息をつく。言わなきゃよかったと、心の中で強く後悔した。

するとセラが、首をかしげながら尋ねてくる。

「でもさ、王子様がどうしてこんなところに? 普通、王宮で優雅に暮らしてるもんじゃないの?」

「……まあ、いろいろあってな」
シドは視線を逸らしながら短く答えた。

それ以上は聞かないのかと思った矢先、セラは笑って言った。

「へー、大変なんだね。それでここに?」

たったそれだけ。深く詮索する様子もなく、セラはあっけらかんとしていた。

シドは少し呆れながらも、どこか安心している自分に気づく。
これまで誰かに自分の正体を明かすときは、必ず緊張と警戒がつきまとっていた。けれど、こんなにもあっさりと、拍子抜けするほどの反応をされるのは初めてだった。