魔法使い時々王子

王宮・魔法省応接室。
淡く光る水晶ランプのもと、テーブルに並べられた魔法薬の瓶たちが沈黙を保っていた。ロザリアは資料を読み上げ、静かに口を開く。

「分析の結果、あなたの薬には危険な成分は確認されなかった。製法にも問題はない。成分の精度や配合比も、かなり優秀なものよ」

セラの顔がパッと明るくなる。

「ほんとに? よかった〜!私、結構自信作だったの」

「……でも」
ロザリアは視線を上げ、真剣な口調に戻る。

「無許可販売という事実は消えない。けれど今回は、悪意があったわけではないと判断して、大事にはしないつもり」

セラがホッと胸をなでおろそうとしたそのとき、ロザリアの口調が続いた。

「その代わり、一つだけ条件があるわ」

セラは背筋を伸ばして聞き返した。

「条件……?」

「この王宮の薬室で、正式に働かない? 登録店を持つより、ずっと早く活動を始められるし、研究設備も整っている。何より、あなたの知識や腕前は使う価値がある」

「え……王宮で……?」

セラは一瞬言葉を失った。まさかそんな展開になるとは思っていなかったようだ。

「もちろん、嫌なら無理強いはしない。でも、イスタリアの法に則って活動するには、こういう形の方が都合がいい。あなたにも、王宮にも、メリットがあるはずよ」

しばし沈黙――
セラは少しだけ首を傾げ、ニッと笑った。

「うん、いいかも。せっかく来たんだし、王宮で働けるなんてチャンスじゃない! やってみようかな」

「決まりね」

ロザリアが微笑み、小さくうなずく。

それを隣で見ていたシドは、なんとも言えない表情でふたりのやりとりを見つめていた。
セラのようにまっすぐで飾らない人物が、王宮という閉ざされた場所にどう馴染んでいくのか。
それはこれからわかることだった。