魔法使い時々王子

「……君がこの薬を?」

ロザリアが声をかけると、少女は明るい声で返した。

「はい! 私が作りました!」

無邪気な笑顔でそう言った彼女に、シドはどこか違和感を覚えた。
その顔には見覚えがない。だが、どこか懐かしさを感じる雰囲気があった。

「この町の出身?」

「いいえ、アスタリトから来たの。知ってる?アスタリト王国。ここから近くはないわね。うちは代々、魔法薬を作っていて、町ではそこそこ知られてるのよ。」

「――アスタリト?」

シドの表情がわずかに揺れた。

「アスタリトに、魔法薬師の家なんてあったか……?」

小声でそうつぶやいたが、セラには届いたらしい。彼女は肩をすくめて笑った。

「ふふ、そう言われると思った。アスタリトって、魔法使い自体が少ないし、目立つような店も少ないから。でも私の家は小さくてもずっと薬を作ってて、遠くの町に卸すことも多かったの。知らないのも無理ないわよ」

それでもシドは、やや疑問を拭えずにセラを見つめた。

「じゃあ、なぜここに?」

「イスタリアで自分の店を開いてみようかなと思って、まずは試しに人通りのあるところで売ってみたの。反応も見たかったし」

「その行為自体が問題なのよ」
ロザリアが冷たく言った。

「イスタリアでは、魔法薬を販売するには王宮に届け出を出して、許可を得る必要がある。登録されていない薬の販売は法律違反。知ってた?」

「……ううん、知らなかった。あちゃー、やっちゃった?」

セラは全く悪びれた様子もなく頭をかいた。

「まぁ、怒るのも分かるわ。でも今教えてもらったし、ちゃんと手続きするわよ。ルールには従うつもりだから」

そのケロッとした態度に、ロザリアは深いため息をつく。

「一度王宮に来なさい。正式な手続きを説明するわ」