魔法使い時々王子

夜も更けたころ、レオのバーの扉が静かに開いた。
疲れた様子で入ってきたのはリアンだった。カウンター席に腰を下ろすと、どこか落ち着かない仕草で髪をかき上げる。

奥でグラスを拭いていたレオが顔を上げた。
「……リアン。どうした、珍しく一人か。」

リアンは曖昧に笑って、グラスの縁を指でなぞる。
「んー……ちょっとね。なんか疲れちゃって。」

レオが静かにリアンの前にジンジャーティーを出す。
「甘いやつでもどうぞ。で? 何があった?」

リアンはひと呼吸おいてから、ぽつりと呟いた。
「近衛隊の人に……告白されてね。」

「へぇ、そりゃ大事だな。」

「うん。で、その人のことを今日、シドに聞かれたの。
シド、私が告白されたこと……知ってたみたいでさ。
“いいやつだ”とか、“性格も剣の腕も申し分ない”とか……すごく勧めてきたの。」

そう言ってリアンは俯いたまま、かすかに笑った。
「気付いていたわよ、シドが私に恋愛感情なんてないことくらい。……でもね、なんか落ち込んじゃって。」

そのまま、リアンはカウンターに額を預けた。
レオは何も言わず、少しだけ苦笑して、グラスを拭く手を再び動かした。