魔法使い時々王子

王宮の回廊。
シドは、貴族の婦人に声をかけられているところを、偶然通りかかったリアンに見られた。

「……人気者ね、シド」

「リアン。いや、急に話しかけられて……」

「あまり浮かれないようにね」

リアンは少し表情を暗くして忠告した。

「…浮かれてなんかない」

「そう?ならいいけど」

リアンは微笑むものの、その笑顔は少しだけ引きつっていた。どこか落ち着かない様子のまま、ふたりは数歩並んで歩く。

沈黙が流れるなか、シドはふと口を開いた。

「……最近、アルバと話したか?」

リアンの足が止まった。表情には出さないが、一瞬、まばたきが遅れる。

「……なんで、それ聞くの?」

「いや……」

短くそう答えると、シドはそれ以上言葉が続かなかった。そんなシドを見て、リアンはゆっくりと笑みを浮かべた。けれど、その笑みは少しだけ、どこか寂しげだった。

「いい人よね、アルバさんって。剣術大会でも優勝してたし。それに優しいところもあるし」

「そうなんだよ。アルバの剣の腕は言うまでもないし、性格もいい。……正直、彼以上の人って、なかなかいないと思う」

その言葉に、リアンは小さく目を見開いた。けれど何も言わず、ただ微かに口元を引き結んだ。

「……そっか。じゃあ、行くね」

それだけ言い残し、リアンはくるりと踵を返して歩き出した。シドの言葉を背に受けたまま、振り返ることなく──。

シドはその背中を見送りながら、自分が何か言い間違えたのだろうかと、答えのない疑問を胸に残した。