シドは、今日もロザリア直属の補佐官として、変わらぬ日々を忙しく駆けまわっていた。
王政の文書整理に加え、貴族たちとの会合の付き添い、時に魔法の補助的な調査まで。
ロザリアの指示は的確で容赦がないが、シドは黙々とこなし、その冷静で整った所作に多くの貴族や官吏たちが一目を置いていた。
――そして、剣術大会以降、シドは「王宮の時の人」となった。
王宮の廊下を歩けば、彼を見かけた婦人たちが口元を押さえて囁き合い、侍女たちは紅潮した顔で視線を送り、時にはお茶に誘う手紙すら舞い込む始末。
「剣も魔法もできるあの青年が…」と噂は止まることなく広がっていた。
「本当に、すごい人気なんですね。」
そう話しかけたのは、アリスの侍女・エミリーだった。
アリスは、読んでいた本から視線を外し、曖昧に笑った。
「そう……シドが?」
「ええ、あの剣術大会が大きかったんでしょう。しかもあの時の振る舞い、王妃様付きの侍女長まで褒めておられたとか。」
エミリーは続けるが、アリスの耳にはもう届いていなかった。
(あのとき……シドに抱きしめられたあの感触、忘れてるわけじゃないのに)
あの塔の中、嵐の音に驚いてしがみついた自分。
包み込むように静かに抱きとめてくれた彼の腕。
すぐに離れたはずなのに、あの一瞬がずっと胸の奥に残っていた。
(どうして……どうして、あんなことをしたんだろう)
彼の優しさ? それとも、ただ慰めだったのだろうか?
その答えをまだ、アリスは探していた。
王政の文書整理に加え、貴族たちとの会合の付き添い、時に魔法の補助的な調査まで。
ロザリアの指示は的確で容赦がないが、シドは黙々とこなし、その冷静で整った所作に多くの貴族や官吏たちが一目を置いていた。
――そして、剣術大会以降、シドは「王宮の時の人」となった。
王宮の廊下を歩けば、彼を見かけた婦人たちが口元を押さえて囁き合い、侍女たちは紅潮した顔で視線を送り、時にはお茶に誘う手紙すら舞い込む始末。
「剣も魔法もできるあの青年が…」と噂は止まることなく広がっていた。
「本当に、すごい人気なんですね。」
そう話しかけたのは、アリスの侍女・エミリーだった。
アリスは、読んでいた本から視線を外し、曖昧に笑った。
「そう……シドが?」
「ええ、あの剣術大会が大きかったんでしょう。しかもあの時の振る舞い、王妃様付きの侍女長まで褒めておられたとか。」
エミリーは続けるが、アリスの耳にはもう届いていなかった。
(あのとき……シドに抱きしめられたあの感触、忘れてるわけじゃないのに)
あの塔の中、嵐の音に驚いてしがみついた自分。
包み込むように静かに抱きとめてくれた彼の腕。
すぐに離れたはずなのに、あの一瞬がずっと胸の奥に残っていた。
(どうして……どうして、あんなことをしたんだろう)
彼の優しさ? それとも、ただ慰めだったのだろうか?
その答えをまだ、アリスは探していた。



