ガーデンパーティー当日。
シドは、揺れる小船の上でそっと息を整えていた。
身に纏った真っ白のシャツとパンツは、エドが用意してくれたもので、いつもの装いとは違って落ち着かない。

ガーデンパーティーが開かれる小島まではロザリアとエドと共に船で向かう。

船が湖の中央に浮かぶ小島に着くと、真っ白な布地のテントやパラソル、涼しげな噴水が出迎えた。
木陰には貴族たちがグラスを片手に談笑し、仄かに甘い香水の香りが風に乗って漂ってくる。

(相変わらず、こういう場は……苦手だ)

少し気圧されながらも、シドは塔の脇を通り抜け、パーティー会場の中心へと歩を進める。

「…シド、白がとっても似合ってるわよ。」

白のパラソルを手に、ロザリアがにこやかに言った。
シドは肩をすくめた。

「あら、美味しそうなお菓子があるわね。じゃあね、シド。楽しんで。」

ロザリアが行ってしまうとシドは紅茶の入ったカップを手に木陰の下でパーティーの様子を眺めた。

剣術大会以降、王宮内で注目を浴びてしまった。

シドはあまり目立たないようにこのガーデンパーティーをやり切ろうと決めていた。

すると、会場の端でリアンがカップを並べていた。

リアンと目が合うとシドは近寄った。

「…よう、忙しそうだな。」

「シドもね。ガーデンパーティーへ招待されるなんて、剣術大会での影響はすごいわね。」

リアンは少し浮かない表情をしていた。

「…ロザリア様の付き添いってだけだ。」

「…剣術大会、最後残念だったわね…アルバさんとの試合、惜しかったわ。」

シドはアルバが優勝したらリアンに告白すると言っていたことを思い出した。リアンの様子からまだ想いは伝えていないようだ…。

「…いや、近衛隊隊長には敵わないよ」

「そんな事ないわ。あ、私行かなくちゃ。じゃあね」

リアンはそう言ってその場を後にした。