シャンデリアの灯りが揺れ、舞踏会は最高潮を迎えていた。
その中で、仮面をつけた男女が静かに舞っている。
それを、広間の奥の静かなバルコニーから見下ろすように見ていたのは、アデレードだった。
葡萄酒のグラスを手にしながら、彼女は踊るふたりの姿をじっと見つめている。
「……あの子。こっちでは、あんな顔するのね」
ふと、隣に立っていた側近のエレフが小さく声をかけた。
「アデレード様。あれは――」
「ええ。間違いないわ。この国の王女……アリス・イスタリア」
エレフが目を細めた。視線の先、王女の仮面越しの笑顔は紛れもなく“それ”を物語っていた。
「……一応、国王陛下にご報告を?」
「そうね。『シドはただの逃亡王子じゃない。別の国の姫と踊るほどには、この国に馴染んでる』……そう伝えて」
エレフは静かに頷き、バルコニーを下がっていった。
アデレードはひとり、グラスを唇に運びながら、その光景を見つめ続ける。
「――でも、いい顔だったわ。シド」
彼女の呟きは、風にかき消されるように夜に溶けた。
その中で、仮面をつけた男女が静かに舞っている。
それを、広間の奥の静かなバルコニーから見下ろすように見ていたのは、アデレードだった。
葡萄酒のグラスを手にしながら、彼女は踊るふたりの姿をじっと見つめている。
「……あの子。こっちでは、あんな顔するのね」
ふと、隣に立っていた側近のエレフが小さく声をかけた。
「アデレード様。あれは――」
「ええ。間違いないわ。この国の王女……アリス・イスタリア」
エレフが目を細めた。視線の先、王女の仮面越しの笑顔は紛れもなく“それ”を物語っていた。
「……一応、国王陛下にご報告を?」
「そうね。『シドはただの逃亡王子じゃない。別の国の姫と踊るほどには、この国に馴染んでる』……そう伝えて」
エレフは静かに頷き、バルコニーを下がっていった。
アデレードはひとり、グラスを唇に運びながら、その光景を見つめ続ける。
「――でも、いい顔だったわ。シド」
彼女の呟きは、風にかき消されるように夜に溶けた。



