建国記念日の式典が無事に終わり国王と王妃が退席すると、夜の王宮では非公式の仮面舞踏会が始まっていた。
そこでは仮面をつけ、身分も肩書きもすべて隠しての無礼講。貴族も騎士も、時には王族すらもひとときの自由を味わいにやってくる。
その陰で、王宮の侍女たちは会場のあちこちを忙しく動き回っていた。
「失礼。魔法大臣のロザリア殿を見かけなかったか?」
声をかけてきたのは近衛隊長・アルバ。仮面舞踏会には参加しておらず、真面目な面持ちのまま、礼儀正しく控えめに声をかける。
振り返った侍女――リアンは、少し驚いたように目を見開いた。
「ロザリア様なら……さきほど、バルコニーの方へ向かわれました」
「案内してもらってもいいか?」
「はい。どうぞ、こちらです」
リアンは丁寧に一礼すると、控えめな足取りで歩き出す。王宮の長い廊下を、仮面舞踏会の喧騒から離れるように進んでいく。
月の光が差し込むその道で、アルバは何気なく口を開いた。
「……式典は無事に終わったが、君たちは今夜はまだまだ遅くまで大変だな。」
「そうですね。。でも、仮面舞踏会は眺めているだけで何だか楽しくなります。」
リアンの横顔に、アルバはふと目をとめた。
「……君も参加したいと思う?」
「あ、いえ。私は……」
リアンは少しきょとんとした後、はにかんで小さく頭を下げた。
やがてバルコニーに着き、アデルがロザリアを見つけて足を向けると、リアンは静かに踵を返した。
アデルは彼女の背中を見送りながら、まだ名前しか知らなかった彼女という存在に、なぜか心が留まるのを感じていた。
そこでは仮面をつけ、身分も肩書きもすべて隠しての無礼講。貴族も騎士も、時には王族すらもひとときの自由を味わいにやってくる。
その陰で、王宮の侍女たちは会場のあちこちを忙しく動き回っていた。
「失礼。魔法大臣のロザリア殿を見かけなかったか?」
声をかけてきたのは近衛隊長・アルバ。仮面舞踏会には参加しておらず、真面目な面持ちのまま、礼儀正しく控えめに声をかける。
振り返った侍女――リアンは、少し驚いたように目を見開いた。
「ロザリア様なら……さきほど、バルコニーの方へ向かわれました」
「案内してもらってもいいか?」
「はい。どうぞ、こちらです」
リアンは丁寧に一礼すると、控えめな足取りで歩き出す。王宮の長い廊下を、仮面舞踏会の喧騒から離れるように進んでいく。
月の光が差し込むその道で、アルバは何気なく口を開いた。
「……式典は無事に終わったが、君たちは今夜はまだまだ遅くまで大変だな。」
「そうですね。。でも、仮面舞踏会は眺めているだけで何だか楽しくなります。」
リアンの横顔に、アルバはふと目をとめた。
「……君も参加したいと思う?」
「あ、いえ。私は……」
リアンは少しきょとんとした後、はにかんで小さく頭を下げた。
やがてバルコニーに着き、アデルがロザリアを見つけて足を向けると、リアンは静かに踵を返した。
アデルは彼女の背中を見送りながら、まだ名前しか知らなかった彼女という存在に、なぜか心が留まるのを感じていた。



