アルフィ殿下の一行が城門を出発する前、馬車の傍に呼び出されたシドは、軽く頭を下げて立っていた。
周囲には見張りの兵が数人いるだけで、他に話を聞く者はいない――はずだった。

「シド殿」

振り返ったアルフィは、最後に見せた時と違って、どこか真剣な瞳をしていた。

「私はね、男も恋愛の対象に含まれるのだ。正直に言うと、君のような美しい顔立ちの男に出会ったのは初めてだ」

突然の告白に、シドは一瞬言葉を失う。

「……は、はあ……それは……恐縮です」

「君さえよければ、私の国に来てくれないか?王家直属の魔法使いとして雇いたい。もちろん、報酬や住まいもこちらで用意する」

重ねられた視線に、シドは軽く苦笑を浮かべた。

「ありがたいお言葉ですが、今はまだ、この国で果たすべき務めがありますので……」

「ふむ、残念だな」

アルフィはそれ以上強くは言わず、代わりに馬車に乗る直前、言い残すように振り返った。

「手紙を書く、返事をくれよ。じゃあ、またな、シド殿」