廊下に出るとアリスはシドの方を向いて小さな声で囁いた。
「……ありがとう。」
「何が?」
「誤魔化さないで。助けてくれてありがとう。ちゃんと分かってるから。」
シドはふっと軽く笑みを漏らした。
「光栄です。王女様。」
そう丁寧にお礼を言ったシドにアリスも思わず笑顔が溢れた。
***
アリスとシドのアルフィ王子を迎える大仕事は無事に終わった。
国王と王妃も参加し、見事な料理とワインのもてなしにアルフィ王子は上機嫌で夕食会を過ごしていた。
夕食会の最中はアリスがアルフィの隣の席だったが、何故かアルフィは魔法に興味があるようでしきりにシドに話しかけていた。
どうにか無事に終わり、シドとアリスはそれぞれほっと胸を撫で下ろした。
シドはロザリアと共に執務室で報告会をした。
「…そう、記憶処理までしたのね。」
シドの報告を聞いて、ロザリアは紅茶を一口飲むと窓から外を眺めた。
「…はい。刺激が強すぎないよう調整しました。一国の王子ですから、揉め事を起こすわけにはいかないと。」
「噂通りの王子ね。女好きで有名。この間も別の国で一悶着あったらしいわ。よく未然に防いでくれたわね、ありがとう。」
ロザリアは珍しくシドを褒めた。
シドは少し驚いた顔をした。
「なぁに?」
シドの表情にロザリアは首を傾げた。
「…いや、ここへ来て初めて褒められたんで驚いてます。」
「最初から、才能には一目置いていたわ。ただ、心が追いついてくるのを待っていたの」
その言葉に、シドは目を伏せてからゆっくりと頭を下げた。
「ありがとうございます、ロザリア様」



