魔法使い時々王子

謁見の儀は形式通りに終わり、王宮内を案内する流れとなった。
シドとアリスは、ロザリアの代わりに殿下の随行を任されることになった。

「姫様、失礼ながらご案内をお願いできますか?王宮の温室や書庫を、ぜひ拝見したく」

「もちろん。ご案内いたしますわ」

アリスは涼やかに微笑み、隣を歩くシドに目配せする。

 (さて、無事に終わるかしら――それとも、何か起こる?)


***

王宮の回廊は、白石に日の光が反射して美しく輝いていた。
アリスは、アルフィ殿下の歩調に合わせながら穏やかに案内を続けていた。

「こちらが王室の書庫です。主に歴代の文書や魔導記録が収められていて――」

「ふむ、美しい声ですね、アリス殿下。案内よりも、そちらを聞いていたいくらいだ」

アルフィは冗談めかして言ったが、その視線はアリスの首筋に向けられていた。
シドはすぐ背後でその様子に気づき、わずかに歩調を速めて二人の距離を詰める。

「殿下、温室の方にもお寄りになりますか?本日咲いたばかりの青バラがございます」

アリスが提案するとアルフィも頷いた。

「それは興味深い。拝見しよう。」