魔法使い時々王子

「なんのことかしら?」

ロザリアは、とぼけたように返した。

「シド様を、後継者にと考えておられたのでしょう?」

エドの言葉に、ロザリアは眼鏡を外した。

そして、窓の外へ視線を向ける。

「今年は、白木蓮が咲くのが遅いわね」

窓の向こうには、まだ蕾のままの白木蓮の木が立っていた。

「例年なら、もう見頃のはずなのに……まだ蕾だわ」

ロザリアの言葉に、エドはそれ以上何も尋ねなかった。

ロザリアは、いつまで経っても花開かない白木蓮の木を見つめる。

そして、誰にも聞こえないほど小さく、深いため息をついた。


そんなロザリアを見て、エドは「やれやれ」と言いたげな顔をした。

「シド様には、だいぶ期待されていたのではありませんか。引き留めるために、説得されてはいかがです?」

その言葉に、ロザリアはふっと笑みをこぼした。

「エド。魔法使いは、シドだけじゃないのよ」

「ですが……」

「確かに、あの子はいい腕をしていたわ。でも、また新しい弟子を育てていけばいいだけのこと」

ロザリアはそう言って、再び窓の外へ視線を向けた。

「……そうでしょう?」

エドはロザリアの横顔を見つめた。

けれど、それ以上は何も言わなかった。

二人はしばらくの間、まだ咲かない白木蓮の木を静かに見つめていた。