魔法使い時々王子

シドは王宮へ戻ると、そのまま執務室へ向かった。

扉を開けると、珍しくこんな時間まで机に向かっているロザリアの姿があった。

シドは思わず驚いた顔をする。

「あら、こんばんは」

ロザリアはいつもと変わらない、どこかマイペースな様子で挨拶を返した。

「ロザリア様。こんな時間にどうしたんですか?」

「ちょっと調べ物をね」

そう言って、ロザリアは眼鏡を外し、凝り固まった首をゆっくりと回した。

「ああ、そうだ。ルイ王子から、あなたがアスタリトへ向かう日程の候補が届いているわ」

ロザリアは机の上に置かれていた用紙を手に取る。

「いよいよねぇ」

「……はい」

シドは用紙を受け取った。

そこには、アスタリトへ向かうためのいくつかの日程が記されていた。

「何年ぶりの帰国になるのか……」

用紙へ目を落としながら、シドが呟く。

「仕事は、きちんとセラに引き継ぎます」

その言葉に、ロザリアはふっと微笑んだ。

「心配しなくても大丈夫よ」

「ですが……」

「ちょうどもう一人、弟子として迎えようと思っている子がいるの」

ロザリアは眼鏡を机の上へ置いた。

「セラもだいぶ慣れてきたことだし、あなたの代わりを務められるようになるかもしれないわね」

「……そうですか」

シドはわずかに表情を曇らせた。