魔法使い時々王子

その後、シドは王宮へ戻っていった。

キースはというと、店のソファに座ったまま、いつの間にか眠り込んでいる。

店のカウンターには、リアンとレオが並んで座っていた。

レオはグラスを傾けながら、隣にいるリアンへ声をかける。

「……大丈夫か、リアン」

リアンがシドに想いを寄せていたことを、レオは知っていた。

だからこそ、今日シドから聞いた話を受けて、ずっとリアンのことが気に掛かっていた。

リアンはしばらく黙って考えていた。

そして、ゆっくりと口を開いた。

「……とても驚いたわ」

そう言って、リアンはグラスに視線を落とす。

「でも同時に……すごく納得できたの」

「納得?」

「ええ。シドと出会ってから、ずっと感じていた違和感があったの」

リアンは少しだけ笑った。

「私たちとはとても親しくしてくれるのに、自分のことはほとんど話さないでしょう?」

レオも頷く。

「ああ」

「話したくなかったんじゃなくて……話せなかったんだって」

リアンはそう呟いた。

「だから今日のシドは、どこかすっきりしたように見えたの」

レオはしばらくリアンを見つめていた。

そして、少し迷うように口を開く。

「……シドに、気持ちは伝えなくていいのか?」

リアンは少しだけ目を伏せた。

けれど、すぐに顔を上げる。

「……ええ」

その声に迷いはなかった。

「シドはアリス様を愛してる。そして……アリス様もシドを愛してる」

リアンは静かに息を吐いた。

「私も、シドのことを愛してたわ」

過去形になったその言葉に、レオは何も言わずに耳を傾ける。

「だから……言わないわ」

リアンはそう言って、穏やかに笑った。

その表情には、悲しみに沈んでいる様子はなかった。

むしろ――

自分の気持ちにきちんと向き合い、前を向こうとしているように見えた。