魔法使い時々王子

「突然この国に来た俺を、三人がよくしてくれた。本当に感謝してる」

シドがそう言うと、三人は顔を見合わせた。

「なに?どうしたの、シド。もう酔っちゃった?」

リアンが不思議そうに首を傾げる。

「なんだよ。シドもキースみたいに、どこか旅にでも出るのか?」

レオはそう言いながら、空になったシドのグラスへ酒を注いだ。

その一方で、キースだけは何も言わなかった。

シドがこれから話そうとしていることが、分かっているから。だからこそ、黙ってシドを見つめている。

「いや、酔ってないし、旅にも出ない」

シドは小さく首を振った。

「……話してなかったことがあるんだ」

三人の視線がシドへ集まる。

「この国に来る前の話を、今までしてこなかった。出身や、何をしていたのか……」

シドは一度言葉を切った。

「話せなかったんだ」

そう言った瞬間、自分の手に力が入っていることに気づいた。

シドはゆっくりと息を吐く。

そして、三人をまっすぐに見つめた。

「俺は……アスタリト王国出身だ」

その言葉に、レオとリアンの表情が変わる。

シドは続けた。

「父は、アスタリトの王。俺は……第二王子として生まれた」

――その瞬間。

キース以外の二人は、まるで時が止まったかのように固まった。

誰も、言葉を発することができなかった。