魔法使い時々王子

「来てくれてありがとう」

アルシエラは穏やかに微笑んで言った。

「いつもは一人でここへ来るけれど……人がたくさんいるのも、いいものね」

「騒がしくしてしまって、すみません」

アリスは少し申し訳なさそうに言った。

「そんな事はないわ。とても楽しかった。ゆっくり休めましたか?」

「ええ、とても」

アルシエラはそう答えると、ふっと笑った。


「また、いらっしゃい」

アルシエラはアリスの肩にそっと手を置いた。

そして、優しく微笑んで部屋を出て行った。

「……」

一人になった部屋で、アリスはしばらく動けなかった。

肩に残った、アルシエラの手の温もり。

それが、胸の奥までじんわりと広がっていく。

アリスは幼い頃から、両親から十分な愛情を受けて育ってきたわけではなかった。

母親と、こんなふうに他愛もない話をした記憶もない。

優しく声を掛けてもらったことも。

温かい手で触れてもらったことも。

だから――

今、初めて感じた。

これが、母の温もりなのかもしれない。

アリスは胸元にそっと手を当てた。

とても嬉しくて。

そして、心が温かかった。

「……お母様」

小さく呟いた言葉は、誰もいない部屋へ静かに消えていった。