魔法使い時々王子

アルシエラに言われた通り、アリスたちはアヴェリア宮殿で存分に休んだ。

朝は、鳥のさえずりと木々の葉が風に揺れる音で目を覚ます。

王宮にいる時のような慌ただしさはない。

朝食を終えると、アリスは庭へ出た。

柔らかな日差しを浴びながら、畑の周りをゆっくり歩く。

小さな畑には色とりどりの野菜が植えられていて、その間をカモたちがのんびりと歩いていた。

「ふふっ」

アリスが近づくと、カモたちは一斉にこちらを見た。

その様子を見て、アリスは思わず笑みをこぼした。

少し離れたところでは、ローズが庭に咲く花を積んでいた。

「部屋に飾りましょう。とってもいい香り」

一方、リトは木陰に置かれた椅子に座り、本を読んでいた。その横ではノエルが紅茶を淹れている。

「リト、ずっと本を読んでるの?」

アリスが声を掛けると、リトは本から顔を上げた。

「ここは静かだからな。読書にはちょうどいい」

そう言いながらも、その表情は王宮にいる時よりもずっと穏やかだった。そんな様子にノエルも優しく微笑んだ。

ダリウスは湖へ出て、ヨットを楽しんでいた。

しばらくすると、湖から戻ってきたダリウスが、濡れた髪をかき上げながらこちらへ歩いてくる。

「アリスも乗ってみるか?」

「ええ。今度一緒に乗ってみたいわ」

そんな何気ない会話を交わす。

昼食の後には、皆で庭の木陰に集まり、冷たい飲み物を片手に他愛もない話をした。

夕方になると、アリスは宮殿のテラスで紅茶を飲みながら、沈んでいく夕日を眺めた。

王宮にいた時には、こんなふうに時間の流れをゆっくり感じることなど、ほとんどなかった。

何かを決めなければ。

何かをしなければ。

そんなことばかり考えていた。

けれど、ここでは何もしなくてもいい。

ただ、風を感じて。

美しい景色を眺めて。

皆と笑って。

そんな時間を過ごすだけでよかった。

アリスは、本当に久しぶりにゆったりとした時間を過ごしていた。