朝の王宮はまだ日の出前で、メイドや執事達もまだ寝ている時刻ーー。

「…少し規定からズレてるな。」

シドは目を細めながら、城壁の柱に埋め込まれた装置にそっと手を添えた。装置は魔力検知結界の制御核――外部からの異常魔力を感知し、王宮の防御魔法に連動する重要なシステムだった。

ロザリアから王宮全体を囲っている魔法の結界。これの微調整を任された。

「シドの魔力量なら、ギリギリのバランスで調整する練習になるわ」
そう言われて任されたこの作業は、派手さはないが、魔力の繊細な操作が求められる。

シドは集中し、右手から魔力をゆっくりと送り込む。ほんの少しでも強すぎれば感知機構が暴走し、逆に弱ければ反応しない。
まるでガラス細工を扱うような緊張感に、思わず息を呑む。

キィンーー。
一筋の光が一列に並び、一定量の魔力が送られた。
これで今日も変わらず王宮はロザリアの魔法によって守られている。

「…よし、完了。」

今までのロザリアの雑用係から、少しだけ魔法に関わる仕事を与えられてシドはやり甲斐を感じていた。

ネクロフォージの一件依頼、シドはもうロザリアにどんな仕事を頼まれても文句は言わず従おうと心に決めた。そしていつか、自分もロザリアのような魔法使いになることを目標とした。

作業が終わったところでちょうど王宮に朝の光が差し込んだ。メイドや執事達も起きて来て、慌ただしく朝の支度を進めている。