魔法使い時々王子

王宮に戻ってきて数日。
シドは以前のように文句を言うこともなく、黙々と与えられた雑務をこなしていた。
書類の整理、部屋の掃除、お茶の準備――魔法に関わる仕事は一切なく、それでも不満ひとつ口にせず、真面目に取り組んでいた。

そんな彼の姿を、ロザリアは何度も横目で見ていた。

その夜、ロザリアは側近のエドを部屋に呼ぶ。

「エド。明日から、シドに魔法の仕事を任せようと思ってるの」

エドは少し驚いたように眉を上げる。

「ずっと雑用ばかりでしたが……やっと、ですか」

ロザリアは静かに紅茶を口に運び、ふっと微笑んだ。

「見極めていたのよ。力だけじゃない。性格、考え方、物の扱い方……そういうもの全部。
ようやく合格、ってところかしら」

少しだけ柔らかくなる目元。
かつて魔導師として名を馳せたロザリアの、その冷静な判断の先に、静かな信頼が宿っていた。

「これからが本番よ。――あの子には、ちゃんと教えてあげなきゃ」

そう言って、ロザリアは机の上の魔導書に、そっと視線を落とした。