魔法使い時々王子

夜の帳が降り、焼け焦げた森の中に冷たい風が吹き抜ける。
ネクロフォージはもういない。地面には灰が薄く降り積もり、ところどころ土が抉れている。

簡易的に作った野営地で傷を負った兵士の手当てがされていた。

シドは怪我をした兵士に頭を下げた。


「…俺の責任だ。」

すると、背後にロザリアが立っていた。

「命令を無視した理由を、聞いてもいいかしら」
その声に怒気はない。だが、芯に冷たい重みがある。

「…見つけ出して倒せると思った。魔物退治を生業にしていたから。」

ロザリアはしばらく黙っていた。
 やがて、ふっと一歩だけ彼に近づき、視線をそらさずに言った。

「——判断力は、魔力より重いのよ」

それだけを残して、彼女は踵を返す。
夜の森を背に、ゆっくりと歩み去るその背中は、どこまでも静かで、どこまでも大きかった。
シドはその場に立ち尽くしたまま、風に舞う灰を見つめていた。己の未熟さが、皮膚の奥でじわじわと焼けるように痛んでいた。

そして、シドはロザリアの凄さを思い知った。

いつもの彼女からは想像もできないほどの魔力に圧倒された。

これが、一国の魔法大臣の魔力(ちから)なのだとーー。