魔法使い時々王子

「ちっ……!」
シドは地面に膝をついた。魔力は消耗し、前方ではネクロフォージがなおも暴れ続けている。背後には、倒れた近衛兵。肩口から流れる血が止まらない。

そのとき——

空気が変わった。

ひときわ鮮烈な魔力の奔流が森を吹き抜ける。続いて、空から無数の魔法陣が降り注ぎ、ネクロフォージの動きを封じるように組み上げられていく。

「ロザリア様……!」

木立の影から現れたのは、魔法大臣ロザリアだった。冷たい目がネクロフォージを見据え、右手の杖をわずかに振る。

ロザリアの表情はいつも執務室でシドに雑用を言いつけてる時とは違った。

険しく、そして見た事もないくらい真剣で身体中から強力な魔力を放っていた。

ロザリアは目を閉じると、右手をスッと上げると足元に魔法陣が広がった。
魔法陣は赤く炎のように光を放ち、ものすごい速さでネクロフォージの身体に円を描きながらまとわり付いた。

ロザリアが目を開けると、ネクロフォージは瞬く間に炎に包まれ、地面ごと焼き尽くすように灰に変えていった。

ロザリアはゆっくりと手を下ろした。


「…す、すごい!!」

近衛兵達がロザリアの魔法を見て声を上げた。


(…なんて魔法(ちから)だーー。)

シドはロザリアの魔力に驚きを隠さずその場に立ち尽くした。