魔法使い時々王子

園遊会まで、残り数日。

アリスは朝からルーナと共に、園遊会での座席表を確認していた。

招待客の名、家格、関係性——
細かな調整が必要で、思った以上に神経を使う作業だ。

「こちらの配置ですと、こちらの公爵家と——」

ルーナが丁寧に説明を続ける。

その時。

控えめなノックの音とともに、扉が開いた。

一人の侍女と——
その後ろに、見知らぬ女性が立っている。

「……ローズ様」

ルーナが気づき、すぐに作業の手を止めた。

アリスは思わず顔を上げる。

(この人が……ローズさん?)

金の髪は柔らかくカールし、美しくまとめられている。
白い肌に、ほんのりと赤みを帯びた頬。
そして、ぱっちりとした瞳。

可愛らしさと華やかさを併せ持つ、印象的な容姿だった。

——その瞬間。

ぱっと、花が咲くように笑う。

そして迷いなく、アリスへと歩み寄り——手を差し出した。

「はじめまして、ローズです!」

明るく、よく通る声。

「あなたのお噂はかねがね。ぜひ仲良くしてくださいね」

人懐っこい笑顔。

その距離の近さに、一瞬だけ驚く。

けれど——

つられるように、アリスの表情もほころんだ。

「こ、こちらこそ……よろしく、ローズさん」

そう答えると、ローズはすぐにくすっと笑う。

「ローズでいいわよ!」

ぐっと距離を縮めるように、身を乗り出す。

「私もアリスって呼んでもいいかしら?」

くるくると変わる表情。

「もちろん、人前では王太子妃様ってちゃんと呼ぶわ。でも今は——ね?」

いたずらっぽく微笑む。

本当に、今初めて会ったとは思えないほどの距離感。

アリスは一瞬きょとんとしたあと——

ふっと、肩の力が抜けた。

「ええ……ぜひ、アリスと呼んで」

そう答えると、ローズは嬉しそうに笑った。