魔法使い時々王子

アリスとルーナは、エレオノーラに案内されて庭園へと足を運んでいた。

春の陽光の下、色とりどりの薔薇が咲き誇っている。

甘くやわらかな香りが、風に乗って漂っていた。

「今年は本当に出来がいいの」

エレオノーラは満足げに微笑む。

「ここまで揃うのは久しぶりよ」

「とても綺麗ですね。」

アリスは素直にそう言った。

だが、その瞳の奥には、どこか落ち着かない色が残っている。

エレオノーラはそれに気づきつつも、何も言わずに続けた。

一通り説明を終えたあと——

ふと、思い出したように口を開く。

エレオノーラは、少しだけ言いにくそうに口を開いた。

「これは園遊会とは関係ないんだけど……従姉妹が帰ってくるのよ。ローズ」

「ローズ……さん?」

「ええ。国王の弟の娘でね、公爵家の令嬢なの」

そこまでは穏やかだったが——

ふっと、小さくため息をつく。

「……とても、自由な子でね」

「自由……ですか?」

アリスが首を傾げると、エレオノーラは苦笑した。

「ええ、王族らしからぬ、という意味で」

少しだけ視線を逸らす。

「結婚適齢期だというのに、まったくその気がなくて……ついにはご両親が困ってしまって、しばらくこちらで過ごさせて、社交の場に出させようということらしいわ」

エレオノーラはそう説明しながらも——

「ローズはこの城でも、いろいろと“有名”なの」

「有名……?」

「ええ」

小さく頷く。

「よく騒ぎを起こすものだから…悪い子ではないのよ。ただ——」

エレオノーラは苦笑を浮かべた。

「少し、手に負えないだけで」