魔法使い時々王子

園遊会について、アリスはルーナから説明を受けていた。

王宮の庭園——丁寧に手入れされた花々の中でも、特に誇りとされているのが薔薇。

園遊会では、選ばれた貴族たちを招き、王室で育てられたその薔薇を披露する。

品種、育成の歴史、そして王家との関わり。

それらを語りながら、穏やかなひとときを過ごす——それがこの催しだった。

「今年は例年よりも開花が早く、見頃も長く続いておりますので——」

ルーナの落ち着いた声が、静かに続いていく。

けれど。

アリスの意識は、そこにはなかった。

(……星晶……)

頭から離れない。

シドの言葉。
自分の選択。
この先の未来。

考えれば考えるほど、思考は絡まり、ほどけなくなっていく。

「——ですので、当日はこの順序でご案内を——」

「アリス様?」

はっとして、顔を上げる。

ルーナが、少しだけ心配そうにこちらを見ていた。

「あ……ごめんなさい。少し、考え事をしていて……」

小さく笑って誤魔化す。

だが、その表情はどこか硬い。

「大丈夫でいらっしゃいますか?園遊会の運営、ご無理なさっていませんか?」

優しく、しかし真っ直ぐな問い。

「いいえ、違うの。大丈夫よ」

アリスはすぐに首を振った。

一呼吸おいてから、言葉を続ける。

「……もう一度、教えてくれる?ごめんなさいね。。」

ほんの少しだけ、申し訳なさそうに微笑む。

ルーナは静かに頷いた。

「かしこまりました、アリス様」

そして再び、丁寧に説明を始める。

その声を聞きながら——

アリスは、自分の胸の内を押し込めるように、そっと息を吐いた。