魔法使い時々王子

二日間の短い休暇は、あっという間に過ぎ去った。

夏の別荘での騒動の後、アリスは王宮へ戻り、何事もなかったかのように日常を過ごしていた。
そしてシドもまた、魔法大臣付き魔導補佐官という、肩書きだけ立派な職場へ戻ってきた。

「これ、午後までに分類しといて。属性ごとに分けてね。あと、倉庫の整理もよろしく」

ロザリアはいつものようにさらりと言った。
涼しげな表情のまま、魔導書にペンを走らせている。

シドは曖昧に頷きながら、山積みの報告書を見下ろした。

魔法の実地指導なんてものは一度もなく、彼が手をつけるのは資料整理や倉庫の在庫確認、そしてロザリアへお茶やお菓子を届けること。
ロザリアの魔法を間近で見て学べると期待していたあの日が、遠い幻のようだった。

(正直、ここで何をしてるのか、わからなくなってきたな…)

そんなある日、ロザリアのもとに、一通の急ぎの手紙が届いた。

「……隣国からよ」

ロザリアは珍しく手紙を開き、眉をわずかにひそめる。

「国境沿いの森で、魔力の異常反応があったらしいわ。斥候が消息を絶ったという報告もある」

シドは、その言葉にわずかに背筋を伸ばした。

「魔物……ですか?」

「断定はできない。でも、あの森はかつて“ネクロフォージ”が出没した地域に近い。調査が必要ね」

彼女は視線を上げ、迷いなく言った。

「シド、あなたが行きなさい。魔導通信で逐一報告を。戦闘行為は禁止。あくまで調査が目的よ」

シドは目を伏せて、わずかに笑った。

「了解しました。」