夜の別荘は静まり返っていた。
月明かりが芝に銀のベールをかける中、アリスはメイドの服をまとい、シドと並んで外壁の陰に身を潜めていた。
「…いた、」
中庭の茂みに身を潜めるながらシドとアリスは偽アリスを見つけた。
庭のテーブルに1人腰掛けて紅茶を飲んでいるようだ。
「……本当に、戻るべきなのかな」
「え?」
「このまま逃げたら、って思うの。王宮は窮屈で、誰も私の本音なんて聞こうとしない。自由なんて夢だと思ってた。でも、あなたと町に出て、ちょっと……味を知っちゃった」
その言葉に、シドはしばし黙った。
月光が彼の横顔を照らす。
「じゃあ、逃げるか? 二人で」
「……え?」
「いま幻影を残したまま、こっそり船でも馬でも盗んで――どこまでも逃げてさ。二度と誰にも見つからない場所に隠れて生きる」
アリスの目が丸くなった。
「……本気?」
「いや」
シドは肩をすくめた。
「本気じゃない。たぶん、あんたは後悔する。王女としてじゃなきゃできないこと、あんたはいっぱい持ってる。俺が羨むくらいにな」
その言葉に、アリスはふっと目を伏せた。
小さく息を吸って、そしてうなずいた。
「わかった。やるわ。入れ替え」
その言葉にシドも頷いた。
アリスはメイド帽を深く被り直すと茂みから気づかれないように出て偽アリスに近付いた。
「…静かに立ち上がって。あの茂みに行くわよ。」
アリスはは偽アリスの耳元でそっと呟いた。
偽アリスはすっと立ち上がった。指示通り動くように作られている。
茂みの奥、シドが待ち構えていた。
準備はいいな?」
「うん。やっちゃって」
シドが詠唱と共に指を鳴らす。
次の瞬間、幻影アリスはきらきらと光をまとうようにして、すうっと空気に溶けるように消えていった。
「入れ替え、完了。」
シドがそう言うとアリスと顔を見合わせて、2人はふっと笑い合った。
月明かりが芝に銀のベールをかける中、アリスはメイドの服をまとい、シドと並んで外壁の陰に身を潜めていた。
「…いた、」
中庭の茂みに身を潜めるながらシドとアリスは偽アリスを見つけた。
庭のテーブルに1人腰掛けて紅茶を飲んでいるようだ。
「……本当に、戻るべきなのかな」
「え?」
「このまま逃げたら、って思うの。王宮は窮屈で、誰も私の本音なんて聞こうとしない。自由なんて夢だと思ってた。でも、あなたと町に出て、ちょっと……味を知っちゃった」
その言葉に、シドはしばし黙った。
月光が彼の横顔を照らす。
「じゃあ、逃げるか? 二人で」
「……え?」
「いま幻影を残したまま、こっそり船でも馬でも盗んで――どこまでも逃げてさ。二度と誰にも見つからない場所に隠れて生きる」
アリスの目が丸くなった。
「……本気?」
「いや」
シドは肩をすくめた。
「本気じゃない。たぶん、あんたは後悔する。王女としてじゃなきゃできないこと、あんたはいっぱい持ってる。俺が羨むくらいにな」
その言葉に、アリスはふっと目を伏せた。
小さく息を吸って、そしてうなずいた。
「わかった。やるわ。入れ替え」
その言葉にシドも頷いた。
アリスはメイド帽を深く被り直すと茂みから気づかれないように出て偽アリスに近付いた。
「…静かに立ち上がって。あの茂みに行くわよ。」
アリスはは偽アリスの耳元でそっと呟いた。
偽アリスはすっと立ち上がった。指示通り動くように作られている。
茂みの奥、シドが待ち構えていた。
準備はいいな?」
「うん。やっちゃって」
シドが詠唱と共に指を鳴らす。
次の瞬間、幻影アリスはきらきらと光をまとうようにして、すうっと空気に溶けるように消えていった。
「入れ替え、完了。」
シドがそう言うとアリスと顔を見合わせて、2人はふっと笑い合った。



